ポケモン対戦を始めてから世界1位になるまでのお話
「妹がやらなくなったポケモンYがあるんだけど、やらない?」
自分がポケモン対戦を始めたきっかけは、知人のこの一言だったような気がする。
ちょっと前から、ポケモンの「レーティングバトル」というものに興味を持ち始めていたし、せっかくの機会だからやってみようと思った。
とりあえずお借りしたポケモンYを起動。
てっきりもう殿堂入りされてるもんだと思ってたけど、なんか中途半端なところで終わってた。
よくわからんかったので最初からやることにした。
トレーナーネームどうしよう。
Yを借りた知人のペットの名前を取って「ぽんちゃん」にした。
後に「ぽんちゃんさん」と呼ばれるたびにこっ恥ずかしくなるとは、当時は思ってもみなかった。
ポケモンレーティングバトルという世界
30時間くらいかけて環境構築(0からレーティングバトル用の環境を整えるのはマジで大変)とポケモンの育成を終わらせていざレーティングバトル(以下、レート戦)へ。
レート戦についてざっくりと説明すると、
・ランダムにマッチングした相手とポケモンバトルをして、各々もっている数字(レート)を取り合う
・レートは大きいほど上がりにくく、下がりやすい(順位が上であるほど1回の負けで多くのレートを取られる)
・シーズンと呼ばれる3ヶ月くらいの期間が設けられており、そのシーズンの終わりに持っていたレートによって順位が決まる。
・初期レートは1500、世界1位になるには大体2250くらい必要
・参加人数は約10万人
大体こんな感じ
ところで、このレート戦を勝ち上がるために最も大切なことは何だろうか。
それは、間違いなく
運である。
運は操作するもの
レート2150以上(上位0.05%)とかになってくると話は変わってくるけど、レート2000(上位5%)は運さえあれば行ける。
自分は生まれつき運がそうとう良い人間だという自信がある。
当時のパーティーは、欠陥が少なくとも10箇所はあった。
それでも運だけでゴリ押し、たいして頭を使わなくても、気付いたらレート2000に到達していた。
ここからが問題だった。
2000は行けるのに、2100には届かない。
レート戦の性質上、「1900から2000」に行くよりも「2000から2100」に行くほうが難しいことは間違いない。
ただそれだけじゃなかった。
レート2000以上から、プレイヤーの質がグッと上がったように感じた。
「運が良ければ勝てる」という状況を作らせてもらえなくなった。
「運が悪ければ負ける」という状況を嫌でも作らされることが多くなった。
確かにこのゲームは運の要素が強い。
でもじゃんけんのように平等の確率ではない。
数多のポケモンの中から6匹を選択し、
1匹1匹に対して、数多の道具の中から1つを選択して持たせ、数多の技の中から4つを選択して覚えさせ、性格を決定し、ステータスを振る。
対戦では、6匹のパーティーの中から選出する3匹を選択し、毎ターン4つの技から1つを選択or後続へ交代という選択肢が与えられる。
この時、他のプレイヤーよりも工夫して、
・勝率を55%にできたらどうだろう。
・ほぼ負けが確定している試合で、5%で逆転できる手を毎回打てたらどうだろう。
・ほぼ勝ちが確定している試合で、相手の5%の逆転手を毎回潰せたらどうだろう。
レート戦は、負けたら終わりのトーナメントではない。
対戦回数も、シーズン内であれば制限はない。
5%の差を1000試合続けられたらどうなるだろうか。
この5%の差を、「ただ運が良かっただけ」と言う人もいるし、「プレイヤーの実力」と言う人もいる。
言い方がどうであれ、上位のプレイヤーほどこの確率操作が上手い。
この当たり前に気付き始めた頃、2014年11月21日にポケットモンスター オメガルビー/アルファサファイアが発売された。
運営からの御加護
どうしてもメガゲンが重い。
メガガルーラにも直にプレッシャー掛けられる奴がいないし、受け主体だから安定しない。
積んでくるパーティーも苦しい。
悪と霊も重たい。後投げできるやつが1匹もいない。
ガルゲンに強くs130族超えで、現エースのゲッコウガと役割が被らず、物理受け以外で止まらない程度の火力と汎用性があって、受けポケ3匹の弱点である悪・霊を受けられて、積みポケが来ても対応できる先制技持ちの物理エースとかいうご都合ポケモンがほしい。
オメガルビー/アルファサファイア(以下、oras)にて、これらの条件を完璧に満たすポケモンが追加された。
きっと僕の願いがゲームフリークに届いたのだろう。
こうして僕のパーティーの大まかな弱点は、ゲームフリークさんが解決してくれた。
こういう部分でも、自分の運の良さを感じざるを得ない。
ランキング依存症
ポケモンXYで、運だけじゃゴリ押せないと思い知らされた。
だから、上位1%の壁を突破するためには、パーティーとプレイングの質を改善する必要があった。
何を思ったのか、当時の自分はとにかくアホみたいに試合数をこなした。
全く同じパーティーで300試合くらい回していると、なんとな~く同じような展開で負けていることに気付いてくる。
更にもう300試合くらいすると、それに対する具体的な改善案が見えてくる。
この流れを1年くらいかけて3,4セットほど行い、本当に少しずつパーティーを改善していった。
どんだけ効率悪いねん。
この分野に限らず、本当に強い人ってのは未知の領域に対する解像度が高く、
多少自身の認識とずれていても、その原因の細分化やそれに対する改善策を導き出すのがすごく上手いと思う。
頭悪いくらい試合数をこなしていたけど、当時は平日7講義+3時間部活、休日4時間部活だったので言うほど時間もなかった。
だから睡眠時間を削って無理やり捻出した。
捻出した時間と絶対的な豪運を武器に、レートに潜り続けた。
今思えば睡眠時間を削るってなんて愚かなことをしてたんだろうって思うけど、
このゲームやればやるほどレートも順位も上がっていく。
それが気持ちよすぎる。
勝つことで、上に行くことでしか得られない依存的な快楽がそこにはあった。
かけっこで1番になるとか、TCGの地元大会で優勝するとか、そんなものとは規模が全然違う。
10万人の参加者のなかで、ガンガン順位が上がっていく。
こんなんやめられるわけないやんけ。
睡眠を削ってでもやりたいことがあったことをある意味うらやましいと思う反面、
単に自分がランキングという 偽りの成長 に依存していただけなのかもと、時々考えちゃう。
そして、2015年11月14日orasシーズン12にて、初めてレート2200(上位0.03%)の世界に到達した。
世界一になった日
レート2200に乗り、順位は7位。シーズン終わりまでの残り時間は30時間程度。
ここでシーズンを終えるというのも1つの選択肢としてあったのかもしれないけど、
1位になることしか見えてなかった。
2100帯の対戦ですらめちゃくちゃ気持ちいいのに、2200帯で対戦することを我慢できるわけなかった。
レート2200までくると一戦一戦がものすごく重たい。
勝ってもほとんどレートは上がらず、1回負けるとその後3連勝はしないと取り返せない世界。
初めての2200帯における対戦で、世界一も視野に入ってくる順位
極度に緊張したり興奮したりしちゃうかなと思ってたけど、今までにないくらい落ち着いてた。
極端に感情の浮き沈みが少なくなって、緊張しすぎることもなく、かといって緩みすぎることもなかった。
体中の感覚がなくなって、目とゲームを操作するための右手しかないみたいだった。
集中力も今までにないくらい最高の状態で、かつそれを3時間以上継続できていた。
というか、自分が集中していることにすら気づいてなかった。
この感覚は、まだ人生で1回しか味わえていない。
世の中のあらゆる分野のトッププレイヤーってこういう状態を意図的に引き出せたりするんかね...
そんな奇跡もあったおかげで、
2015年11月16日、僕はorasシーズン12の世界1位になった。
エピローグ
この後もポケモンはしばらくやっていたので、色々ありました。
目標を数字にしてたことによる不感症とか、謎の虚無感とか、最も尊敬するプレイヤーとのコンタクトに成功とか、プログラミングやるうえでポケモン世界1位とか死ぬほど意味ねーとかとか。
後々話していければいいなと思っています。
あと、この記事を読んでいただいたうえで、
を読んでいただけると、より楽しんでいただけるのかなと思います。
ありがとうございました。